実際に起こったハラスメントの概要や判例を紹介するページです。判例を知ることは、ハラスメントを正しく理解することにつながります。

判例1あるマヨネーズ会社でおこったハラスメントの判例 東京地裁(平成15年)付帯資料/飲みにケーション、二次会以降は業務か否か?

行為者A 専務取締役
被害者B 入社4年の女性従業員

マヨネーズ等製造・販売会社(甲社)

■女性社員による商品開発新チーム編成の顔合わせ懇親会後、BとA取締役は3次会まで飲食し、タクシーに同乗して帰宅
■1次会は会社の職務として開催され、2次会もA取締役が発案して1次会参加者が全員参加
■3次会参加者も社員のみであり職務についての話がなされている
■タクシーは3次会終了後にA取締役が呼んだ
■車中で、A取締役がBにのしかかるように覆いかぶさって唇にキスをした
■Bが動転し逃れることができないでいると、A取締役は執拗に唇にキスをし、舌を入れようとしたがBは口を閉じ歯を食いしばって阻んだ(キスは2,3分、Bの唇は青黒く内出血)
■BがA取締役から離れて反対側のドアに体を向けたが、A取締役は「エッチしよう」と発言
■運転手が行き先を尋ねた機に、Bはタクシーを止めてもらい下車
■以降、Bは退職まで欠勤(しばらく外出するのも怖い状態) 

■下車したBは直ちにBの直属上司Cに電話してセクハラを訴えて発覚
■A取締役はセクハラの翌日にBに謝罪
■A取締役はセクハラの翌々日に、社長にセクハラを巡って問題が生じていることを報告したが、社長は、会社として取り上げて事実確認を調査することはしなかった
■Bの上司Cや管理部門の副部門長DらがBに対応したが、 Dは本件セクハラを会社の問題ではなく社員間の個人的な問題と判断していた
■DらはBに他のポストを用意し、A取締役と直接会うことのないようにする等の提案をしたが、BはA取締役の処遇をはっきりしないと会社に復帰しないと述べ、けじめとして本件セクハラを社内で公表すること、慰謝料の支払い等を要求
■話し合いはまとまらず、欠勤を続けるBに対し、甲社は、私傷病欠勤であり医師の診断書も出されていない等として、休業届を提出するよ■う求め、諭旨解雇又は懲戒解雇もありうると警告
■Bは退職            

(Bは、A取締役と甲社に対しても使用者責任による損害賠償を請求)

【請求等】 Bは、行為者と会社を被告として提訴

【判決】  

A取締役の損害賠償責任 約291万円

(内容) カウンセリング・治療費約1万円:逸失利益 120万円(退職後再就職までの6ヶ月分の賃金)慰謝料 150万円 弁護士費用 20万円

甲社の使用者責任 : A取締役と連帯して責任

【理由】 
(A取締役の不法行為責任)
A取締役のセクハラ行為は、Bの性的決定権の人格権を侵害する不法行為である
(甲社の使用者責任)
1次会から3次会までの経緯やタクシー乗車の経緯、BとA取締役が個人的に親しい関係になかったことから、本件セクハラ行為は、会社の業務に近接して、その延長において、A取締役の上司としての地位を利用して行われたものであり、会社の職務と密接な関連性があり、「事業の執行につき」行われたといえる

飲みにケーション、二次会以降は業務か否か?
業務時間 or 私的時間

業務時間とみなされる場合

■1次会は会社の職務として開催
■2次会もA取締役が発案して1次会参加者全員参加
■3次会参加者も社員のみであり職務についての話をする
■3次会終了後にA取締役がタクシーを呼んだ

私的時間とみなされる場合

■2次会に社員以外の会社とは無関係の人物が参加した 例:社員の友人知人の参加
■3次会は社員と友人知人で職務とは関連の無い話をした
■自ら交通手段を選択し手配した